当地域は、日本有数の医療スタッフ確保困難地域ですが、「医療の谷間に灯をともす」べく、多くの同志の参画を求めています。
南魚沼市病院事業では2040年問題を見据え、大きく令和2年度から経営改革を始めました。この5年間、我々の立ち位置としては、公営企業として、単に利益の追求ではなく、公益性を果たすと言う観点から、「地域住民の生きるを支え続ける」という理念のもと段階的に市民病院の病棟再編を行い、高度急性期から地域包括ケア、さらには回復期リハビリテーション病棟を整備するとともに、大和病院の入院機能を市民病院に集約しました。そして市民病院の訪問看護ステーションに加え、大和地域包括医療センターにおいてもゆきぐに大和訪問看護ステーションを新設した他、市民病院に訪問介護ステーションを新設しました。また、市民病院の居宅介護支援事業所とゆきぐに大和ホームケアステーションを強化し、往診、訪問診療、特養等への医師の配置や、へき地巡回診療などを含め病床数は4床増床した144床ではありますが、在宅医療も含めると全体で約1,000床をカバーして参りました。
その結果、市民病院の収益は令和2年度の決算から令和6年度の決算見込みで約10億円増収しました。この10億円についてはほとんどすべてを給与の改善に充当して参りました。そして、正職員数は令和2年度の287人から令和7年4月1日では367人に80人も増え、常勤医は大和も含めて14人だったものが28人まで倍増しております。
現在、市内の死亡者の約半数は、病院事業の医師や看護師がお看取りをさせて頂いております。確かに局所的に見ると在宅での対応など経営面からのみ見れば非効率的な部門はありますが、大局的に見れば人口減はあるものの、「地域住民の生きるを支え続ける」という視点に立つとき、全体としての介護医療需要は今後、10年間は減る事はないと言うふうに考えております。
次の5年間の初年度の令和7年度の特徴としては、まず、市民病院の病床数を昨年度の4床に引き続き、地域包括ケア病床を8床増床し全体で152床とします。また雪解けから建設事業を再開し骨格が見えてきた新健診施設については市民の健康寿命の延伸、人生百年時代に向け、新たなシステムを導入するともにAI診断を視野に入れて令和8年度にスタートします。また大和地域包括医療センターの移転については、林市長のイニシャチブの下、令和9年度中のオープンに向け、令和7年度早々に基本設計を進め、冬には実施設計を開始したいと考えています。令和11年度には、北里大学医学部の南魚沼市地域枠の1期生がいよいよ着任しますが、それまでに基幹型臨床研修病院の指定を目指しています。
一方、公定価格の配分はその時々の政策誘導に重点があることから、装置産業としての地域における病院事業は、診療報酬等の改定そのものに一喜一憂することなく、地域住民の真のニーズに適切に対応することこそが、市民から選ばれる病院となり、結局は中長期的には安定した経営にも結びつく王道ではないかというふうに確信しております。
このような方向性は、交通政策や住宅政策、コンパクトシティや医療のまちづくりといった市政全般に包含される中での市民の皆様の幸福度、満足度の追求にも結び付かなければならないものと思います。
組織は人です。
病院は組織ニーズもありますが、まずは、職員がその能力を発揮できるよう常に人事は適材適所に努めております。
さて令和7年度は、常勤医として新たに丹波嘉一郎院長補佐兼緩和ケア内科部長、宮下洋院長補佐兼健康開発部長、松永力精神科部長、那須敬一消化器外科部長、尾岸俊明腎臓内科医師が加わりました。
手前味噌になるかもしれませんが、多くの職員の患者に対する優しさ、献身的な態度には本当に頭が下がる思いがしております。
また、良い病院になってきたというのが、大方の職員の評価です。南魚沼市民病院には勢いがあります。職員は若く、多くは希望を持ち、改革志向です。そして、多くの職員が業務の改善に意見を持ち、明るく創意工夫して月の単位で改善すべき事は改善しながら自律的に前進している姿は、この数年で定着してきた「財産」であり尊いものだと思っております。
冒頭申し上げましたが、これら職員の努力に応えるためこの4年間、徐々に職員の処遇を改善して参りました。そして、いよいよ令和6年度においては、人事院勧告の完全実施とともにボーナスの4.6ヶ月を実施することができました。
次の5年間も、人材確保による経営改善と給与の改善が好循環を生んでいくものと考えています。
2025年4月 南魚沼市病院事業管理者兼南魚沼市民病院院長 外山 千也